seventh call

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「この馬鹿者……あんなことやったらどうなるか……」 「ごめんなさい……他に方法が……」 「まったく……私が居たから良かったものの……」 「ううう……」 ……遠くの方で話し声がする。 それが聞こえるということは、俺は何とか生きていたようだな。美咲の奴、何という無茶を……。 「ん……」 目を開けると、二人の少女が心配そうな面持ちで俺を覗き込んでいた。 「おっ、気が付いたか」 その片方は、よく知った顔だ。名前は確か、沙里奈と言ったか。 「よ、良かった……」 しかし、もう片方に見覚えはない。 肩程に伸ばされた黒髪、白磁を彷彿とさせる白い肌。そして、エーデルワイスのような可憐な雰囲気。 ……なんでセーラー服? 「君は……?」 「あっ、この姿でお目にかかるのは初めてですね」 こほん、と咳払い。 「初めまして。私が人形に憑依する前の、正真正銘の橘美咲です」 あぁ。 言われてみれば、美咲の実家で見た遺影の中の子だ。 セーラー服は事故に遭った時の服装か。 「よいしょ……」 上体を起こす。 「大丈夫か?」 沙里奈が俺の背中を支えてくれた。 「すまん」 言いつつ辺りを見渡す。 青い空。 白い雲。 どこまでも続く黄色い花畑。 ……またこの空間か。 「お前、またここに連れてきたのか?」 「違う。今回はちょっと事情があってな」 沙里奈は口をへの字に曲げた。 「美咲がお前の頭をラムネの瓶で殴っただろう?それが存外強くてな。お前は三途の川を渡りかけていたんだ」 顔から血の気が引く音がした。 「渡り切っていたら確実にお前は死んでいた。しかし、ギリギリの所で私が引き戻した。その時にお前は気を失ってしまって、今に至る訳だ」 「ごめんなさい……」 沙里奈の隣で縮こまっている美咲。 どうやら俺は、相当ヤバい体験をしたらしい……。
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