10410人が本棚に入れています
本棚に追加
「まぁいいだろう」
沙里奈はニヤリと笑った。
こいつがこう笑う時は、大抵ロクなことが起こらない。
「確かに、美咲の言うことも一理ある。悠二の意見が雌雄を決すると言うのなら、転生してからが勝負だな。私の力を持ってすれば、明日にでも可能だ」
おいおい、そんなに急ぐもんじゃないぞ?
俺にも心の準備というものがあってだな
「いいでしょう。その勝負受けて立ちます!」
聞いちゃいねー。
「悠二」
「悠二さん」
二人が同時に俺を見た。
「私を選ばなかったら、どうなるか分かっているな?」
「私のこと、よろしくお願いしますね?」
双方とも笑っているが、それは決して穏やかな笑顔ではない。何か邪気に似たものを含んだ、とても黒い笑顔だ。
俺ほどの経験値が無い者が見れば、まず間違いなく泣いて逃げ出す。
お二人さん。
それは恐喝っていう立派な犯罪ですよ?
「分かったよ。二人が戻ってくるまでに必ず答えを決めておく。損得感情無しの、素直な気持ちをな」
そう言うしかあるまい。
まぁ俺としても、答えを出すことにやぶさかではない。
こんな美少女たちに迫られるなんて、ある意味幸せ者だよ?
……そう思わなきゃやってられん。
「そうか。それを聞いて安心した」
沙里奈は俺の頭に手を置いた。
「あっ、私も」
美咲が沙里奈の手に自分の手を重ねた。
「しばしの別れだ。必ず、また会おう」
「今度はちゃんとした人間になって戻ってきます。その時はまた、よろしくお願いしますね!」
「あぁ。約束――」
言い終わる前に、俺の意識は墜落していった。
最初のコメントを投稿しよう!