hang up

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それにしても、この冬から夏にかけての俺の成長には著しいものがあり、時代でいえば江戸から明治大正昭和を一気に飛び越えて平成、経済成長率なら中国やインドなんか目じゃないくらいの数値を叩きだしている、と思う。 しかしだからと言って俺の生活が変わったかと言えば、孫に話すことが少し増えたぐらいで特に変わった風もなく、両親は相変わらず海外旅行に行ったまま帰ってこないし特番の取材が来る訳でもない。 呪い少女、さらには人形少女と一緒に生活し、この世のボーダーラインギリギリまで行って帰ってきたのは、世界広しと言えど俺くらいなものじゃないかなぁ。 考えてみれば美咲が居なくなってから一日しか経ってない訳だし、変化があるとすればこれからだろう。 そう……。これからだ。 沙里奈の奴は明日にでも転生出来ると言っていたが、果たしてそれは嘘か真か。 俺には今、沙里奈と美咲のどちらを選ぶのかという、文字通り命を賭けた問題に直面している。 どっちも正解といえば正解だし、はずれといえばはずれ。いや、こういう言い方は失礼か。 結局煮え切らない俺がいけないのだろうけど、それでも執行猶予は与えられてもいいだろう? ぶっちゃけて言えば、俺は二人とも好きなのだ。だから決めかねているという点も大きい。 ま、少なくとも今すぐに答えを迫られている訳ではないのだ。 まずは心身の疲れを癒すことが先決―― ジリリリリリ!ジリリリリリリ! 久々に携帯が鳴った。 着信音が黒電話と言うのは何だか心臓に悪い気がするが、他に無いのだ。 我慢して使うしかあるまい。 「非通知設定……?」 携帯の液晶画面には、はっきりとそう表示されている。 知ってる奴の番号ならちゃんと表示されるし、番号を知らない奴なら掛けてくる筈がない。 (まさかとは思うけど……) 俺は美咲がこの家を訪ねてきた時のことを思い出した。 あの時も確か非通知設定だったな。 もしかしたら、転生した沙里奈あるいは美咲が掛けてきたのかも知れない。 ジリリリリリリ!ジリリリリリリ! 携帯は相変わらず、けたたましい音を立てている。 どうやら俺が出るまで切るつもりは無いらしい。 (腹を括るしかない、か) 意を決して、俺は通話ボタンを押した。
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