first call

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そんな訳で俺は今、玄関ドアの前に立っている。 装備無しというのもあれだったので、一応武器を持ってきた。 死ぬ程振ったコーラ(500ml) ……皆まで言うな。 だって包丁とか持ち出したら危ないだろう? これが悪戯だったとして、もし俺が谷口を刺した時のことを考えみろ。世界的に見れば厄介者が居なくなって明るい未来が広がるけどさ、俺の未来は真っ暗だ。 谷口ごときの野郎に人生オシャカにされるなんて、こっちから願い下げだね。 その点このコーラなら、殺傷能力は無いけど怯ませるぐらいのことは出来る筈だ。 その間に谷口なら殴り飛ばして蹴り入れればいいし、非科学的な何かなら逃げるなり説得なりすればいい。 頭いいな。俺。 そうは言っても、いきなり開けるのもあれだな。 確かにドアを勢いよく開けた時の一撃は見込めるが、いかんせん射程が短すぎる。 ここはやはり、覗き窓から外の様子を見るべきか。 「……あれ?」 覗き窓を使うのも何年ぶりかな、と思っていた矢先だ。 丸く切り取られた世界には、いつもの我が家の玄関前が映っているだけで、人の姿はない。 一応ドアを少しだけ開けて外の様子を伺ってみたが、やはり人っ子一人居ない。 「悪戯だったか……」 ほっと胸を撫で下ろす。 誰かが面白がってやったんだろう。多分。 全く。世の中には変なことをする暇人が居るもんだな。 ……扇風機に向かって「あー」ってやっている俺も、人のことは言えないだろうけど。
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