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    「お前勿体無いことしたな」        千尋は笑って煙草を吸った。    煙は風に撒かれて一瞬で消える。        千尋、ごめん。        僕はまた謝った。      この先、僕は沢山の人に嘘をつき謝るのだろう。      構わない。      波風は出来るだけ立てたくないんだ。        「慰めてあげようか?」      振り向くと千尋は含み笑いを浮かべていた。      「奢りなら」      じゃれ合いながら屋上を後にする僕らを、太陽は照らし続けている。        あとどれ位こうして笑えるんだろうか。      初めて、自分がいなくなった世界を想像した。        僕のいない仕事場、僕のいない自分の部屋。    僕がいなくなっても千尋はこの屋上で煙草を吸うのだろうか。      早紀は、良い人を見つけて、結婚して、家庭をもつんだろうか。        これだけ想像しても、まだ自分が死ぬ実感なんて微塵も感じなかった。     
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