地面に縛られた少女と時間を気にする僕

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 文明の利器が音を発てる。 ……チン。  再び文明の利器が音を発てた。  電子レンジという、全自動加熱機を凝視しながら僕は呟く。 「何を作ったらいいだろう」中身のない箱を何度も暖める。地球温暖化の手伝いという。  少女が満足できて、僕も満足できる料理。下手なものを作って、少女の鉄槌をたしなむのは非常に避けたい。避けれないわけではないが、場を一番早く納めるには、甘んじて食らうのが得策だと、何故か知っている。 ――何故だろう。  記憶されているはずの物は、どうやったらこの目で確認できるのだろう。記憶はどこに記録される?  あの少女とだって、一緒に居るのだから、それに関する記憶は有っていいはず、なのに僕は起きたとき少女の存在すら覚えていなかった。これは忘却なのか、今先程から起きた事実なのか……哲学が混じりそうなので、考えないことにする。  それに僕がキッチンの前に棒立ちしはじめて、かれこれ二十分、隣のリビングから話せない代わりに机をこれでもかというぐらい叩いて、悪魔が唸っている。適当に用意してでも、彼女の空虚を埋めねば、僕の存在が空虚になりかねない。  それにしても会話制限を律儀に守る奴だ。言っておけば近所迷惑には困らないな。手足を封じればね。ただ、僕に女性を縛る趣味はない。  縛るより縛られたい……おっと、これは妄言。  埃を被った炊飯器に米がなかったので、一枚しかない食パンをトースターに放り込み、目玉焼きを手早く二つ焼いて、食パンの上に乗せた。 「お嬢様、飯の準備ができました」 実に上品に言えた。これなら将来執事等簡単にできるな。ツッコミ所は理解しているつもり。
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