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ヴーッヴーッ。
私が自室のベッドに寝転がっていると、部屋の中心に置かれたガラス製のテーブルの上で携帯電話が震えだした。
寝転がったまま手を伸ばし、手に取った携帯電話のサブ画面を覗き込む。
「山瀬くん・・・?」
携帯電話を開いて、通話ボタンを押した。
「もしもし」
『綾乃!すぐに上坂病院いけ!』
第一声で急に病院に行けとは、失礼極まりない。
「別に私頭おかしくなったりしてないよ」
『違うんだよ!修也が!』
私の胸が少し高鳴った。
修也、それはついさっき晴れて長年の想いが通じた相手の名前だ。
ずっと好きだった人。
その想いは幼いころから途切れることなく彼だけを・・・。
「修也がどうしたの?」
『修也が!修也が事故で・・・!!』
私の身体全体がドクンと脈を打ったような気がした。
「や、やだなぁ、変な冗談はやめてよ」
『嘘じゃない!いいから早く病院へこい!』
通話が切れる小さな音が、鼓膜を震わせた。
うそ・・・、でしょ・・・。
病院の自動ドアが開く時間でさえもどかしく思えた。
集中治療室の前には山瀬くんに安原くん、美鈴に雫が集まっていた。
「あ、綾乃!」
息を切らせながらみんなのもとへ向かう。
「みんなっ・・・、修也は・・・?」
「まだわからない」
私は治療室の扉を見た。
修也・・・、死ぬなんてやだよ・・・!
「信号無視の車に突っ込まれたらしい」
「修也・・・」
その時、治療室の扉が開き医師が姿を現した。
「どうなんですか!?修也は!?」
「・・・残念ですが、午後七時八分、ご臨終です」
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