別れ

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そ、んな・・・。 膝から力が抜け、私はその場にへたり込んだ。 「修也が・・・、死んだ・・・?」 涙さえ出ないのはなぜ・・・。 胸に大きな穴が空いてしまったのがわかった。 その場を動く気にもなれなかった。 数日たっても、私は自室のベッドで寝転がったまま一日を過ごしていた。 起き上がろうという気になれない。 学校だって行く気になれない。 私にとって修也の存在はとても大きく、彼に会えなくなったなんて信じたくなかった。 いままでだったら電話をすれば声が聴けた。 彼の家に行けばいつだって会えた。 学校に行けばその二つが同時に叶っていたのに・・・。 瞳から、熱いものが流れ出した気がした。 あの時は出なかった涙。 彼がいなくなったことを私が受け入れたということなのだろうか・・・。 その時、家の中にインターホンの音が鳴り響いた。 両親は仕事に行っているので、この家には私しかいない。 けれど、出る気にはなれなかった。 再びインターホンの音が空気を震わせた。 居留守を使おう。 動きたくないの・・・。 できることならこのまま眠って、目覚めなければいい・・・。 きっと夢の世界には修也が待ってくれている・・・。 「綾乃ー?いないかー?」 私は驚いて顔をあげた。 ベッドから飛び起きて、玄関へ向かった。 「ど、どちらさまですか?」 私は恐る恐る一枚の扉の向こうのある人へ声をかけた。 「綾乃!いるんじゃん」 この声! 聴き間違えるはずがない、愛しい人のやさしい声。 私は頬に涙が伝うのがわかった。 玄関扉の鍵を開けて、ノブをひねった。 こもりっ放しだった私の目に、日光が一段と眩しく感じられた。
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