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見回りをする中、何度か彼岸花を見かけた。まぁ、この花が咲く時期だし当たり前か。
そんなことを考え込んでいると、先程まで黙り込んでいた山崎が口を開けた。
「彼岸花がいっぱい咲いてますね」
山崎の言葉に内心ドキリとした。俺の思考が読まれたのだろうか?いやそんなはずはない。そう言い聞かせ俺はいつものように装う。
「あぁ、それがどうかしたのかよ」
「どうかしたって訳じゃないんですけど、ふと思い出したんですよ。彼岸花の花言葉を」
「彼岸花の花言葉?」
そんなものがあるのかと眉間に深く皺を作る。そんな状態の為か山崎は汗を垂らした。
「花言葉には"悲しい思いで"と言う悲しい意味の花言葉が多いんですよ」
「ふーん」
興味のない様子で山崎の話を聞く俺だが実は興味津々だ。
「ですが、"想うのはあなた一人"という意味もあるんですよ。彼岸花って意外と純愛なんですね」
「――想うのはあなた一人か…‥」
「何か言いましたか?」
「あ、いや何でもねェ」
総悟がそんな花言葉を知っているはずがねェよな。
そんな事を考えながら黙り込んでいると山崎がクスクスと笑いだした。
「何、笑ってんだよ…」
「すみません。あまりに沖田さんと同じ反応だったので…つい」
「総悟と…?」
「はい、沖田さんにも彼岸花の話をしたんですが、話を聞いた途端副長と同じ様に固まってたんですよ。似たもの夫婦ですね」
その後のことはあまり覚えていない。総悟の行動があまりに可愛すぎて頭から離れなくなった。
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