黒を宿す天使

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 ゼウスが右手を無造作に翻すと、ユーディットの眼前に靄が浮かび、そのまま彩りを映し出す。 「そこへ行って貰おうか」  その世界の名は『イヴ』――後に『最終世界』と呼ばれる前の世界である。  数多有る世界だが、文明の発生や発達の仕方は違えど、雛形をもとにしているだけあって、星の位置に大きな差はない。  『イヴ』で天使が存在できるのは銀河系内太陽系の第3惑星、地球だけである。  神の影響を色濃く受けるその世界は、天使にとっても悪魔にとっても住みやすいと言えた。 「畏まりました。シャ・ノワール、ゼウス様の命に従い、地上へ参ります」 「うむ。……悪魔の処置はそなたの判断に任せる。狩るも狩らぬも、自由にしなさい」  再びユーディットは困惑を露わにする。  今までエデンに近付く悪魔はたった一人を除いて全て狩るようにと命令されていた。  それを何故、今になってからそのような事を言うのかが解らない。  疑問ではあったか、それ以上の質問はせず、漆黒の法衣を翻しその場を後にした。  好きにしろということはつまり、今までどおりでも構わないという事だという結論を導いたのだ
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