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黄昏に染め抜かれたような紫がかった不思議な色の髪を高く結い上げた青年は、ウリエルと同じ顔を軽く顰めて食い下がる。
「私情を優先して守衛の役目を放棄するなど――」
「私の代理で行ってくれと頼んでもか?」
五十年の間で、こんな意地の悪い笑みを見たのは、二人ともこれが初めてであった。
そうまで言われて断ることが出来るのは、恐らく不在の大天使長ルシフェルだけであろう。
恭しく頭を下げる二人は、いつも以上に畏まって退出の辞を述べる。
「失礼致します」
言うが早いか、その背に六対の翼を羽ばたかせ、我先にと外へと飛び出す。
見送るゼウスの瞳に浮かんだ色を、入れ違いに扉をくぐった熾天使達も見ることはなかった。
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