黒を宿す天使

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 双子の天使とその親友がユーディットの家を訪れたのは、神殿での会合から十五分ほど過ぎた頃であった。  黒い翼の特殊性は何も色だけではない。  すぐに追いかけた三人でさえ辿り着くまでに全力でそれだけの時間が掛かったというのに、ユーディットは既に夕餉の準備を始めていたのだ。  神を守護する大天使さえ凌駕する速さがあるが故に、そして悪魔を誘き寄せる囮となるが為、この黒天使はエデンの扉を護る役目を担っていたのである。  息こそ切らせてはいないが、全力で飛ばしてきただけあって顔に赤みが強い三人を、真珠も霞む白い相貌が出迎えた。 「おや? 珍しいお客さんですね」 「嗚呼、僕のユーディット! こんな風に会うなんて久し振りですね!」  美女と見紛う艶やかな容貌の青年が、黒衣の家主を高く抱えあげる。  淡い紅を纏う青年の名はガブリエル――節制の美徳を備え、水を司り、“北の鍵”を預かる大天使である。  本来なら女性型の天使が担う役職を任せられるだけあって、声を出さなければ背の高い美女にも見えた。  だがユーディットを軽々と持ち上げる様子を見ても判るように、彼は根っからの青年であった。  頬ずりする青年の緩く結ばれた髪を力強く引き寄せたのは、薄蒼を宿す青年であった。
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