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無造作に額にかかる髪を払いのけ、品のある美貌をユーディットへ向ける。
「僕にしてみれば、君とリフはまだまだ子供です。代替わりしてまだ五十年でしょう?」
「確かにそうだが、もう君と隠れんぼをするような年ではない事ぐらい解るだろう」
ユーディットは問いに応じず、暗灰の瞳を細めるばかりだ。
凛々しい眉を寄せて、アクアマリンの双眸に呆れた色を灯す青年は、薄い唇から息を漏らした。
「……もういい。ゼウス様がお待ちしておられるから、早く行きたまえ」
笑みを絶すことなく肯くと、ユーディットは踵を返した。
その背を見送った男が零した愚痴を拾ったのは、光を反射するばかりの壁だけであった。
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