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神でさえ、黒は代替わりの際に受け継がれるものであって生まれ持つわけではない。
だが確かに、黒天使は今までも何度と無く生まれていた。
不幸にもユーディットを除いて、その誰もが地上の人間と変わらぬ寿命しか持ち合わせていなかったが……。
「まして、苦しんだ覚えも……私は生まれてから今に至るまで、なに不自由なく幸せでございました」
ユーディットはその麗姿からは想像もつかないほどの長命であった。
現在のゼウス神が即位した五十年後に生まれ、四大天使の内ガブリエル、ウリエル、ラファエルの代替わりを見届けている。
天界に存在する数多の天使たちの中で、ユーディットより古株は大天使長ルシフェルとミカエルだけである。
この黒天使の不幸は、ささやかな幸福さえ知らぬ事にあった。
気の遠くなるほどの時間を生きていながら、その殆どをエデンの門を護るだけに使ってきたユーディットは、誰かと過ごす時間というものが極端に少なかった。
幼い頃のウリエルとラファエルが、何度か遊びに来たくらいだろうか。
残る時間は全て、休養か修行か番人をしていたといっていい。
幼い頃でさえ、神殿で育ったために誰かと会う機会も無かった。
喜びも知らないために苦痛も感じないというのは、果たして、幸せな事なのだろうか。
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