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しかも遊んで帰る頃には陽も落ち、家の灯りまでも眩しく見えてきそうなこの辺りは、大人が1人で通ってもあまり気味のいいものではない。
尚更臆病なたくは親に怒られると言うよりも1人で帰るのが嫌だったのだ。
さて、兄弟喧嘩の火種を蒔いた当の本人は腕組みをし、ぶつぶつと何か呟いている。
「お兄もう1人で行ってよ!」
「頼むよー!」
するとチャッと眼鏡を直して
「やっぱり間違いないよ、この林抜ければ大分早く家に行けるよ」
と薮の中に目を向けたままあんけんが言う。眼鏡がズレていないのに直すのはあんけんの癖なのだろう。
その言葉に一瞬髪を掴んでいた手が緩む。すかさずスルッと抜けると髪を結び直しながらまほが
「ほんとに?」
と、尋ねる。
「あぁ、本当だよ、僕の考えに間違いないね。それに前に1度ばあちゃんが言ってた気がするんだ。」
「マジで!あんけんのばぁちゃんが通ったんなら間違いないよ、あの人山歩きのベテランだもんな!」
まほに聞かせる様にわざと大きな声で言う
すると今まで頑として反対していたまほが
「あんけんの考えはあてにならないけど、山菜取りによく山歩きするおばぁちゃんの言うことなら本当かもね」
仕方がない。と言う感じで林の方に歩き始めた。
それに臆病な兄の性格を知っているから、1人で行かせるのに少し後髪引かれるものがあったのだ。
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