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ジュノンはそう言って立ち上がり、長く伸びた腕の羽根をひらりとひるがえした。
『みんな、大丈夫だったかい?』
『クルッポー!ありがとうジュノン。』
『ありがとジュノン。』
『殺されるかと思った。』
『さすがジュノン!かげとらさんの遣いだけある。』
鳩たちは意識を取り戻して口々にそう言った。
ジュノンはにこにこと笑いながら鳩たちの元に近付くと屈み込んで笑った。
しかしその時、ジュノンは背後で何かが動く気配を感じて振り返った。
『!!!!!……なんてやつだ……!』
うねうねうねうね。
ジュノンの深緑の瞳には、爆発して散らばったかまとの体が不気味に膨らんだり縮まったりしながら集まっていく光景が見えた。
それはまるでB級ホラーの怪物の如し。
いや、奴はかぶなのでK級映画といふべきか。
うねうねうねうね。
うねうねうねうね。
うねっ。
ジュノンたちはあまりの地獄のような光景に、ただ真っ青になって震えるのみだった。
散らばった肉片がひとつの核に集まり、つながっていく。
まぁ、結局は野菜が動いているだけなので冷静に見れば怖くなんかないけどね。
『みんな、僕の後ろに!こうなったら…パワープラントを使う!』
ジュノンは両手を組み、何かの印を組んだ。
そして辺りのマナが彼の身体に集まり、ジュノンは光に包まれていった。
『出でよ、僕のパワープラント!野菜剣、サヤエンボク!!』
ジュノンはそう言うと両手を地面に叩き付けた。
すると、彼の心の畑から、曲がった剣のような野菜剣、思うままに敵に切りかかるサヤエンボクが出現した。
『サヤエンボク!目の前のタルパを…斬れッ!!』
そして地面を割って、にょろにょろと植物の蔓が現れた。
『行け行け、クルッポー!』
『やっつけろクルルルル!!』
鳩たちは戦いのダンスを踊り始めた。
一同の視線の先では、白いかぶらがかたちをとりつつあった。
『サヤエンボク!来い!!』
ぼっごーーーん!
そして土が勢いよく盛り返され、サヤエンボクが現れた。
…しかしその根に、何かついていた。
『ウォ~~~~ンチュ~~~~!!!!』
『ぎゃあああああああああ!!』
白いかぶら。白いやつ。奴は、潜んでいた。
そして、待っていた。
いい男が、自分をつり上げる瞬間を。
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