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~同時刻、東京~
相沢は息を殺して様子を伺う…。
その男の中にはもはや人間らしい部分は微塵も残っていないのか、今の状況でも顔は狂った様に笑っている。
しばらくしてノブを撃ち抜かれたドアは音も無く開いた。
その瞬間、相沢はドアに向かって拳銃を連射する。
「ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハァッ」
玄関にドアの木片と埃が巻き上がると同時に6畳一間の狭い室内に破裂音が響き渡る。
しばらくして弾が切れ、相沢は部屋の扉の脇に隠れカートリッジを交換する。
それを待っていたのか、外の男は勢いよく部屋に飛び込むと同時に拳銃を2発撃ち込み相手を威嚇する。
少しの間を置いて相沢の声が響き渡る…。
「ヒャハハお前誰だよ!ダレナンダヨ…」
男は静かに答える。
「お前を狩る者さ…」
しばらく辺りを静寂が支配する。
「意味わかんねぇ…ヒャハ…イミワカンネェヨー!…ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハァッ!!」
相沢は吠えたと同時に部屋の窓ガラスに拳銃を撃ちヒビを入れる。
「ツラぁ覚えたかんなぁ!オマエも殺してやる!ヒャハハ」
狂った様に言葉を吐き捨てると相沢は体当たりをしてヒビの入った窓ガラスを割って外に飛び出し凄まじい早さで闇の中へと消えて行った。
男はなぜか追いはしない、それどころかか満足げに割れた窓を横目に部屋のドアから外に出る。
「派手にやっちゃってぇ、修理大変だろうな」
跡形も無いドアの木片を足でどかしながら呟く。
遠くから耳障りなサエズリが聞こえる。
「日本の警察様はほんとに優秀で涙が出るね」
男はアパートの脇に停めてある車に乗り込むと隣に座る運転手に話しかけた。
「上手くいった、サツが向かって来るから急ぎで頼むぜ」
運転手は黙って頷くと車を急発進させた。
車内で男は静かに身につけていた帽子とサングラス、それとマスクを後ろに放り投げた。
「ねぇ?誰が一体本物の狐ちゃんなんだろね」
男は運転手に言葉を投げかける。
「さぁね?」
運転手は軽く返事を返した。
そのまま車は都会のネオンに静かに消えて行った…。
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