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「さっきから言ってるじゃないですか。私…追われてるんです…」
女は疲れた様に答える。
何日も寝てないんだろう、目の下をどす黒いクマが覆っている。
僕は文句を言ってやろうかと思ったが、意味のない事だと分かってやめた。
「誰に追われてるってんだ?詳しく話してみな?」
僕は諦めて話しを聞く事にした。
「分からないんです…。ただ、先月から変な車に追われる様になって…」
由紀は声を震わせながら話し出す。
「つい…さっき、その車にひかれそうになったのを必死で…必死で逃げてきたの…」
僕はどうでもいいような相槌をうつと、携帯を取り出し相楽にメールを送る。
「取りあえず車で話さねえ?」
由紀は静かに頷くと2人は店をでた。
僕はしばらく由紀の話しを聞くと携帯をいじりながら聞き返す。
「要するに先月から知らない男にストーカーみじみた事をされる様になり、今日そいつから車で挽かれそうになってどこからか調べた面識の無い僕に助けを求めたと…」
由紀は黙ってうなずく。
「更にそのストーカーの心当たりはまったく無いと…」
由紀はまたまた静かに頷く。
「はぁ~」
僕はため息を心の中で吐き捨てる。
なんでこんなくだらない事を引き受けなければいけないのか…。
そう思っていると相楽から電話がかかってきた。
「もしもし相楽だけど、どゆ事?」
相楽は軽くテンパっている。
「さっきメールした通りだよ。僕だって何がなんだか…」
僕は答えると相楽はが思いもしない事を言い出した。
「まさ…か…な。もしかして勝人ちゃん、ずっと見られてたと…か?」
僕はハッとした。
確かにそれなら合点がいく。
あれだけATMを監視していたのだ。
ましてや行動していたのは銀行が閉まった後だ。
もし僕の行動に目をつけた人がいたら、すぐさま計画の事は気付くだろう。
「気をつけてたのになぁ…」
僕は軽く舌打ちをしながら由紀の顔を見る。
僕の心中を察したのか、彼女は満面の笑みを浮かべる。
以外と肝が座っている子だという子は分かった。
それとかなり図々しい女だと言う事も…。
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