駆ける狐

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しばらく相楽と会話のやり取りをした後、急に相楽の声がトーンダウンする。 「じゃあその女は一緒に連れて行かなきゃダメみたいだな…。まぁ計画が終わったら、適当に金を渡してバイバイすれば問題無いよね?」 相楽は更に話し続ける。 「金を受け取ったら共犯だろ?自分も下手にサツに垂れ込みなんか出来なくなるし、後は勝人の好きにすればいいじゃん♪結構かわいい子なんだろ?」 僕は相楽との下らない会話を終わらせて携帯を後ろの座席に投げ捨てる。 少し気まずい雰囲気が車内に充満する。 僕はその空気に耐えれなくなり口を開く。 「とりあえず計画の内容なんだけど…」 僕は今まで事の成り行きと今まで現金の移動がされないATMを探していた事、それと今日でそのATMが見つかるかもしれない事を簡単に説明した。 由紀は何回も頷くと納得したのか自分の事を話始めた。 「私は坂居由紀24歳です。3年前からここ秋田の精神病棟で専属医師をやらせてもらってます。」 由紀は淡々と続ける。 「追われているいきさつは話しましたよね?原因は分からないんです。追って来ている車の窓から男の顔は見えたんですが心当たりがまったく無くて…」 そして由紀はハッとして僕の顔を見る。 「そう言えば車にひかれそうになる数日前、その男の車内での会話を聞いたんです…。日にちは決まった…とか、一週間後に実行するとも言ってました」 由紀は自分には関係無い事だと思ってあまり気にしなかったらしい。 「じゃあホントに原因は分からないんだね?後になって何か出て来ても対処出来ないよ?」 僕が問い掛けると由紀はしばらく黙り込んだ。 「これはあまり言いたくないんですけど…。実は私3年位前に闇金融からお金を借りたんです」 呆れた…彼女に自業自得だと言いかけたその瞬間、僕の言葉はまたもや遮られた。 「でも、ちゃんと全額返済しました。多少は遅れた時期もあったんですが…それでも今は借用書も何も残っていないんです」 僕は話しを聞いていて気になった事を聞いてみた。 「ちなみにいくら借りたの?」 また沈黙が流れてから由紀は答える。 「………300万です」
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