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「えっ?」
僕は由紀にもう一度確認する。
「仕方ないでしょ…どうしても必要だったのよ…」
由紀はそれ以上は話さなかった。
本人も話す気が無いのだろう、そっぽを向いて黙りこんでしまった。
僕は諦めた。
とゆうかどうでも良かったのだ。今は自分の事で手一杯なのに、他人の私情なんて面倒見てられないとゆうのが本音だった。
僕はエンジンをかけて車を駐車場から出すと目的地に向かって車を走らせる。
「そういえば由紀さん、さっき仕事してるって言ってたよね?大丈夫なの?」
僕は運転しながら聞いてみる。
「襲われるかもしれないって時に呑気に職場になんて行ってられないわよ。それと…」
少しの間をおいて由紀は言い放つ。
「その由紀さんってやめてもらえないかしら?なんだか馴れないの」
確かにこんな状況で職場に行くのは自殺行為だと僕は納得した。
「そりゃそうか。じゃあこれから宜しくね、由紀さん」
僕は最初に比べて図々しくなっている彼女に腹が立ったのでわざと言った。
由紀はそれに気付くと僕を睨みつけた後、前に視線を戻した。
30分位車を走らせるとようやく目的地に到着する。
時刻は13時になろうとしている。
どうやら相楽との電話や、由紀との会話で結構時間を取られたらしい。
まぁ、夜まで時間はたっぷりあるので後は暇潰しをするしかやる事は無いのだが。
「どうして予定は夜からなのに、こんな明るいうちから行動してるの?」
その事を由紀に言うとつっかかってきたので僕は一蹴する。
「ホテルのチェックアウトが9時だから…」
由紀は黙り込んだ。
なんか腹が立つのでカプセルはあえて省いて伝えた。
しばらく時間を潰している間、僕は由紀に質問をした。
「なんで精神科に?」
由紀は話そうとしない。
「だってわざわざ都会から、こんな田舎のほうに移動するなんて余程の事がないと出来ないじゃん。実家がこっちにあるとか?」
僕は興味本位で聞いてみる。
「そんなもん居ないわよ!大体そんな事どうだっていいじゃない!」
僕は今までに無い感情的な由紀を前にして確信した。
この女は何か隠している…と。
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