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相沢は作り笑顔をすると、女性を接待用のテーブルに案内する。
背格好は歳が近いせいか妹と同じ位だ。
「失礼致します、早速本題に入らせて頂きます、今日はいくら位御入り用なんですか」
相沢はいつもの様に話しを進める。
「…200万ほど貸して頂けませんか?」
女性は下を向きながら恐る恐る話す。
「失礼ですがここは見た通り普通の金貸しとは違います。利子が払えないとトンズラする輩も少なくない状況です。さすがに200はポンとお貸しする事は…」
相沢はそう言って手元にある書類を見る。
部下に調べさせた彼女の個人情報だ。
「しかし貴方は過去が真っさらだ。当店としてもこのまま、お帰り願うのは心が痛みます。100位なら御用だて出来ますが…」
女性が割って入ってくる。
「お金は今月の下旬には入って来るんです。銀行に借りる予定だったんですが審査が長引いてしまって…」
女性は必死に続ける。
「月末には必ず全額返済しますから、どうかお願いします」
あまりにも必死な形相に相沢は少し戸惑っていた。
妹と姿を重ねていたのかもしれない。
「しかし高瀬かおりさん。何も病院抜け出してまでこんな所に来られるなんて、余程切羽詰まってるんでしょうな」店の端で会話を聞いていたのか、金城が近づいてくる。
「はぃ…」
女性はあまりの存在感に思わず下を向いてしまった。
「いいよ、200万。」
金城は野太い声で優しく話す。
「でもなお嬢ちゃん、もし返せないってな事なってもわしらの事恨まんといてな?」
優しい口調のまま金城は現金をテーブルに置く。
そして契約書を添えると女性は目を輝かせながらサインをする。
「ありがとうございました!」
女性が嬉しそうにお辞儀をして部屋を出ていく。
それを見て相沢は思った。
所詮他人は上辺だけの生き物だ。
金借りる時は人を神様みたいな扱いをするが、取り立てに行くと打って変わって死に神を見る様なツラしやがる…。
「勝手だよな…」
相沢は手元に残った借用書をしまうと鼻で笑った。
一ヶ月後相沢に一本の電話が入る。
「はい、そうですが」
妹が務める病院からだっだ。
「お世話になってます…はい…はい」
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