九月二十一日

2/3

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
時刻は真昼の12時だというのに、辺りは暗く仕切られている。 外は暖かいオレンジで染まっているのに一枚のカーテンによって部屋は漆黒の闇で覆われている。 ジリリリリリリリリリリリリリリリ… 部屋じゅうにアラームが鳴り響く。 「ゔ~ん」 僕は眠い目をこじ開けるとアラームを止めて布団から這う様に出てソファーへと移動した。 一通り部屋を見渡すと僕はテレビを付けて煙草を吸った。 テレビからはワイワイ昼番の司会者の声が流れてくる。 何も今日が休みだからと言ってこんな時間に起きたのではない。 僕こと神原勝人【カンバラマサト】21歳は無職のダメ人間なのである。 自分でそんな事を言うのは流石に抵抗があるが、事実なので仕方がない。 そんなくだらない事を考えていたら携帯が鳴った。 僕は着信を見て電話に出ると馴染みの声が携帯の向こうから聞こえてきた。 「もしもし、また寝てたでしょう。いい加減仕事ちゃんとさがしなさいよ」 僕はいつものように安易に相槌をうつ。 「ほんっと適当なんだから。どうせご飯食べてないんでしょう?今から行くから」 僕は待ってましたと言わんばかりに大きく返事をした。 一時間後キッチンで包丁のリズミカルな音色が聞こえてくる。 僕はその音色でまた眠りに落ちそうだったのだが包丁の柄の部分で叩かれたのでやめた…。 「ったく、人の頭をなんだと思ってる」 僕はぼやいた。すると女が無愛想な表情で向き直った。 「あら、仕事もしないで頭使わないんだから活性化してあげようと思ったんじゃない」 どうやら聞こえたらしい…。女はそう言うと馴れた手つきで食材の方に向きを戻した。 この憎たらしい女の名前は桜井未来【サクライミク】20歳、一応彼女である。 一応というのは今僕が叩かれて不機嫌だから付けただけなので御了承願いたい。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加