九月二十一日

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「未来、お前そんなんばっかりしてたら嫁の貰い手なくなるや?」 今度はわざと聞こえる様に言ってやった。 「そしたら、ま~ちゃんが貰ってね。」 ま~ちゃんとは僕のあだ名らしい。そのまま未来は言葉を続けた。 「死ぬまでこき使ってあげるからねん♪」 彼女は屈託のない純粋な笑顔で言い放った。 僕は一瞬凍りついた後、未来の横に媚びる様に並んだ。 「未来ちゃん何か手伝う事あるかな?」 未来は綺麗に盛り付けられた食器を指さした。 「あらそう?じゃあこれ運んで」 どうやら少しは機嫌が良くなったらしい。 この女には一生勝てないんだろうな…と僕は内心思いながら急いで食器を運んだ。 午後5時が回った。 二人で食事を済ました後、未来が持ってきたDVDを観てたら結構時間が過ぎるのが早い様な気がする。 そして未来は暇そうな僕を置いて友達と遊びに出掛けた。 また暇な時間の始まりである。 僕はテレビを見ながら携帯をいじり始めた。 いつもの様にベットに横になりながら携帯のメモリーをスクロールさせていると僕の中に違和感を覚えさせた。 「誰だっけ?」 そこには見知らぬ番号が登録されている。 「相楽弘之。友達だっけ?前の飲み会にいたっけ?それとも同窓会の時かな?かなり酔ってたからなぁ」 僕はあまり気にしないで携帯を閉じた。 冷蔵庫を開けると前に友達と家飲みで飲んだ残りのビールが並べてある。 僕は一缶手に取るとベットに戻って飲み始める。 「冷てぇ~、やっぱりたまに飲むビールは美味いな」 いつもは一人でお酒なんて絶対飲まないのだが、今日は特別なのだ。 時間が過ぎるにつれて飲むペースが早くなる。 気付いたら350㍉の缶を6本開けていた。 いい感じで酔いが回った僕は先ほど携帯に入っていた番号が気になりだした…。 「覚えてないけど、かけちゃえ」 酔った勢いで番号を連打した。 プルルルルル…プルルルルル… 「だれだろ?」 プルルルルル…プルルルルル… 「中々出ないなぁ」 プルルルルル…プツ! 僕は電話に出ないので諦める事にした。 しばらくして僕の携帯が着信を知らせる。 …相楽弘之。 僕は無言で携帯に出た。 電話の向こうで男が話す。 「誕生日おめでとう…」
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