九月二十二日

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僕は人気の無い歩道を歩いていた。 心なしか酔いも手伝って歩くだけでもかなり楽しい。時刻は深夜の0時30分だ。 それと同時に先程かかってきた相楽とゆう男が言っていた話しの内容も考えてみる。 相楽はとても気さくな感じの声で話し始めた。 「誕生日おめでとう…。俺だけど覚えてる!?」 僕は正直に記憶にないという事を話した。 「まじでぇ!すっげぇショックなんですけどぉ」 沈んだ声で相楽が話し続けた。 「結構前に駅前で意気投合したじゃんよぉ!そん時話した事で電話したんよ」 相楽が僕に救いを求める様な口調になる。 「そうだっけ?なんの話ししたっけか?」 僕はかなり腑に落ちないが一応話しを聞く事にした。 「もう一回一から話すのしんどいなぁ。しかも電話で…。じゃあ勝人これから駅前で飲みながら話さない?前みたいにさ♪」 相楽はそうゆうと店やら時間を勝手に決めて話しを進め出した。 僕は有無を言わさず強制決定のハンコを耳もとに押されて今駅前まで歩いている。 待ち合わせの時間は深夜1時なので予定よりかなり早く場所に着きそうだ。 目的地の居酒屋が見えて来た所で僕は足を止めた。 居酒屋の横で聞き覚えのある声がしたからだ。 見るとガタイのいい男とスタイルのいい女の子が話しをしていた。 僕は気になって隠れて耳を澄ます。 「久しぶりじゃん♪元気だったぁ?」 ガタイのいい相楽らしき人物が女の子に話し掛けている。 「弘之もこんな所で何してんの?またナンパでもしてたんでしょ?」 女も親しげに答える。 女の手にはなにやら白い小さな袋が大事そうに握られている。 何回かありきたりな会話が飛び交うと女が手を振り、相楽らしき人物は僕が待ち合わせで聞いていた居酒屋の中に入って行った。 僕は相楽だと確信したけど、いかんせんそのガタイのいい容姿に見覚えは無かった。 不安になりながらも僕は居酒屋のノレンをくぐった。 会計のレジに居る店員さんに待ち合わせの事を言うと店の奥へと案内された。 「こちらで加藤様がお待ちです」 店員はそう言うと忙しそうに走って行ってしまった。 僕の不安が更に重なった。 「相楽だよな…」 恐る恐る襖を開ける。 そこには白い歯を剥き出しにして笑う相楽らしき人物が、あぐらをかいて座っていた…。
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