開幕

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開幕

     雲ひとつない青空が広がり、そよ風が静かに草花を撫でていく。    そこはグラスフィールドと呼ばれる草原。  四季が無く、一年を通して豊かな若緑が目を引くその場所は、万物を越えた何かがあるようにすら感じられる神秘的な空間だ。   そして、その中央に小さな教会に似た建物が一つ。    尖塔(せんとう)は柔らかな若草色で、ステンドグラスは陽光を受けて虹色に輝いていた。  ただ、教会のシンボルたる十字架はなく、代わりに東洋のルーンのような複雑な文様がシンボルとしてそびえ立っていた。    「これより儀式を始める!」    その内部、蝋台から発せられる炎光のぼんやりとした明かりの元、その最奥に立つ翁が声を上げた。    彼の前には霊台と呼ばれる台があり、そこに置かれた揺りかごには赤子が納められている。     ゆったりと眠り続けているその表情はまさに天使で、見た者全てを和ませる微笑を称えていた。      また、そこには翁の他にも彼を囲むように三つの人影があった。    全員が若草色のローブを身に着けており、フードを被っているためその表情を窺い知る事は出来ない。  誰もが口を真一文字に結び、動く事もなければ
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