出会い

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 僕、増井登は、学校が終わった後に図書館に寄るのが日課になっている。宿題をしたり、最近お気に入りの本を読んだり。僕にとっては、憩いの場所だ。クラスメイトは、カラオケやゲームセンターに忙しいみたいだけど、僕は騒がしい所が好きじゃない。いつも高校生らしくないって友達に言われる。  最近は、図書館に設置されている読書専門の部屋を使っている。僕はいつも、その一番後ろの端の席に座る。  今日も、その部屋でいつものように席に座って、読書をしていた。  暫くしてふと見渡すと、ほとんど席が埋まっている。でも、誰も僕の所まで来ない。  僕は、近くに誰かがいると集中出来ないので、幾らか安心して本の続きを読んでいた。すると。 「あの…隣に座ってもいいですか?」  控えめな細い声が、後ろから聞こえた。  振り向くと、僕と同じくらいの年の女の子が、不安気に僕を見ていた。 「あ、はい、どうぞ」  慌てて了承すると、 「ありがとうございます」  そっとお礼を言われた。その子は、音をたてないように座り、読書を始めた。  そこで僕はやっと、隣に人がいる事に気付いた。  集中できない…。  本のページを繰って見たものの、やっぱり集中出きなくて、ため息をついた。  横目で隣の女の子を見てみる。読書をしている。当然だが。  その瞬間、僕は彼女に釘付けになった。  彼女が一点を見つめる横顔は、とても綺麗で、澄んだ綺麗な目をしていた。吸い込まれそうで、でも、優しい眼差しをしていた。  僕は、彼女の様子を来なくて、見続けた。  暫くして、彼女は僕に気付かないまま、部屋を去っていった。僕は、彼女の出ていく先を見つめていた。  再び本を読み始めようと、視線を落とす。すると、手に収まるサイズの財布。というより、小銭入れが椅子の肘掛けに置いてあった。傷一つついていない、真っ白な小銭入れ。  これは、もしかしてさっきの子の?  純白な小銭入れと、さっきの横顔が重なった気がした。  後々考えて見れば、図書館に忘れ物として届ければ良かったのだ。  でも僕は、次の日小銭入れを持って、昨日と同じ時間に図書館に行った。そうすれば、もう一度彼女に会える確信があった。彼女が同じ時間に来るとは限らない、なんていう客観的な考えは、どこにもなかった。  また会いたい。ただそれだけを思って、彼女を待ち続けた。 一時間、二時間たった。もう少し待とうと、我慢した。
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