2.難しい話を嫌うのは、生物として当然だと思う

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合宿二日目の朝は、右京氏のこんなセリフで始まった。 「とゆーわけで、お前はこの合宿中、一人で特訓な」 「…え゙?」 右京氏の言葉に、オレは焼き魚をつつく手を止めてしまった。 …いや、聞いてませんよ、そんなこと。 「言ってなかったからな」 当然だろ、とでも言いたげな顔だ。 「…何でですか?」 ひとまず落ち着き、理由を聞く。 「んー…そうだな…」 言った後、右京氏はたくあんを口に入れ、数秒で飲み込む。消化器官に悪い食べ方だ。 しばらくして、 「…ドラウプニル」 オレは自分の右手首に目を落とした。 見事な金色の腕輪・<ドラウプニル>が、誇らしげに光り輝いている。 「実はそいつには、魔力を貯める以外にも、使い道がある」 「マジですか!?」 「オレが嘘を言ったことがあるか?」 ここはあえて、首を横に振っておく。 「ただ…それはオレが説明できるほど、簡単なモンじゃない」 タバコを取り出そうとした右京氏は、『室内禁煙』の貼り紙を見て、その手を止めた。 「だから、お前の指導は、武器の専門家に任せといた方がいい、って思ったわけだ」
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