2.難しい話を嫌うのは、生物として当然だと思う

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考えた末、 「…虫なら殺したことあるけど、人は無ぇな」 平然と返したつもりだが、微妙に震えているのを自覚した。 「…そ」 「そう」じゃなくて「そ」。短すぎだろ。 「………」 また黙り込むユーリ。 オレという生き物は沈黙が嫌いだ。故に、 「お前は殺したことあるってのか?」 冗談混じりに聞いてしまった。 「…あるわよ」 …後悔した。軽はずみに聞いたことを。 「………」 ユーリは立ち上がり、空き缶をゴミ箱に投げ捨てた。上手い具合に入る。 そのまま出ようとしたところを、 「おい」 呼び止めた。なんとなく、呼び止めなきゃいけない気がした。 ユーリは黙っていたが、言った。 「父さんと母さんを殺したのは……………あたしだから」 言い終わった途端、ユーリは逃げるように駆け出した。 今度は止めなかった。 と言うより、止められなかった。 (…どういうことだ?) アイツの両親は、アイツが小さい頃に亡くなったと、キクさんから聞いたことがある。 それは…アイツが殺したから? んなバカな…。 「…何だってんだよ」 声に出しても、答えは返ってこない。 結局オレは、日付が変わる寸前まで、そこで呆けていた。 何をやってんだかねぇ…。
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