1.短いようで長い

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潮風が、顔から暑さを奪っていく。 白い手すりに体重をかけながら、オレは大海原を眺めていた。 「………」 …もう飽きてるが。 同じ景色を何時間も見てれば、人間じゃなくても飽きるだろうよ。 「ふぅ~~~…」 ため息をついたオレは、視線を背後に向けた。 「………」 パラソルの日陰で、木宮がブ厚い本を読みふけっている。表紙から察するに、何かの論文みたいだ。 「………?」 オレの視線に気づいたのか、顔を上げて見つめてくる木宮。 「あ、いや…何でも無ぇよ」 「……そうか」 ポツリと言って、読書を再開する。 …こいつの場合、幽霊に見られてても動じないんだろうな…。 冷静すぎて怖いヤツは置いておき、再び海に向き直る。 「………」 オレたちが乗るフェリーは、一つの小さな島に向かっていた。 (やれやれ、だな……) 強化合宿・初日。 オレの心は、晴れない…。
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