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電車に乗っていたのは、帰宅途中らしい学生がほとんどだ。
混雑はしていないため、手近な席に座った。
なるべく帰っていると言う葛西は、電車にも乗り慣れているようで、落ち着いて窓の外を眺めている。
─ガコンッ…
わずかな震動の後、電車が走り出した。
それと時を同じくして、
「おい、あの娘見ろよ。スッゲー可愛いぜ」
「うぉ、マジだ。やっべ、タイプかも…」
少し離れた場所で、他校の男子たちが、ボソボソと話しているのが聞こえた。
オレには辛うじて聞こえるが、葛西には全く聞こえてないらしい。
「隣のあいつ、彼氏かな?」
「さあな。でも、一緒に帰ってる時点で羨ましいよ」
「ははは。違ぇねぇ」
(………)
少しだけ首を動かし、葛西の顔を盗み見る。
日光に照らされた横顔は、同い年とは思えないほどに幼い。
そして、可愛い。
(彼氏、ねぇ…)
不服と言うつもりは無い。むしろ嬉しいさ。
が、オレみたいな凡庸たる男とペアじゃ、葛西も嘆くだろうよ。
うーん…。恋人に見られるのって、けっこう複雑なんだな…。
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