11.嵐の前の騒がしさ

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電車に乗っていたのは、帰宅途中らしい学生がほとんどだ。 混雑はしていないため、手近な席に座った。 なるべく帰っていると言う葛西は、電車にも乗り慣れているようで、落ち着いて窓の外を眺めている。 ─ガコンッ… わずかな震動の後、電車が走り出した。 それと時を同じくして、 「おい、あの娘見ろよ。スッゲー可愛いぜ」 「うぉ、マジだ。やっべ、タイプかも…」 少し離れた場所で、他校の男子たちが、ボソボソと話しているのが聞こえた。 オレには辛うじて聞こえるが、葛西には全く聞こえてないらしい。 「隣のあいつ、彼氏かな?」 「さあな。でも、一緒に帰ってる時点で羨ましいよ」 「ははは。違ぇねぇ」 (………) 少しだけ首を動かし、葛西の顔を盗み見る。 日光に照らされた横顔は、同い年とは思えないほどに幼い。 そして、可愛い。 (彼氏、ねぇ…) 不服と言うつもりは無い。むしろ嬉しいさ。 が、オレみたいな凡庸たる男とペアじゃ、葛西も嘆くだろうよ。 うーん…。恋人に見られるのって、けっこう複雑なんだな…。
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