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まず目に入ったのは、敷地を囲んでいるらしい、高い塀。
それが延々と続き、かなり遠い場所で折れている。
その中央には、木製の巨大な門がデンと控えて、来客を待っている。
純和風の重厚そうな門からは、鉄製のものと大差ない、圧倒的な迫力が感じられた。
(…宍戸のヤロウ…!)
何が没落貴族だ…。ユーリん家に初めて行った時に似てるぞ、この感覚!?
「…神崎君?」
葛西が心配そうに問いかけてくる。それほどまでに、オレはスゴい顔をしていたんだろう。
「………」
この家の大黒柱を、説得しろっての…?
…入る前なのに心拍数がヤバい! オレ、明日から高血圧になる! 何か知らんが断言できる!
「だ…大丈夫、だよ?」
オレを安心させようと必死なのだろうが、葛西のセリフは語尾が疑問形だ。
おまけに、あの大豪邸を背景にしているのだ。逆に不安になってきたぞ…。
「…葛西」
「あ…何?」
「…お邪魔します」
「…うん」
前述した通り、葛西は気が利く子であり、鋭い子でもある。
オレの戦慄を感じ取り、それ以上は何も言わなかった。
…これもまた、彼女なりの優しさなんだろう。
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