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オレの名前を聞いた途端、葛西(母)は目を輝かせる。
「あら! あなたが"あの"神崎君?」
「…"あの"ってのが気になりますけど、オレは神崎ですね」
「やだ~! 来るなら来るって、一言言ってくれれば良かったのに!」
何でオレの名前を知ってんだ? そして、何でこんなにテンション上がってんだ?
…って、今はそれよりも、
「あの…ゆ、夢海さん…?」
「若い人にそう呼ばれるの久しぶりだわ~! でも、できれば"お母さん"って呼んでちょうだい!」
「無理っぽいんで、"夢海さん"で勘弁してください」
…な~んか勘違いしてねーか、この人も?
「えっと…晴十郎さん、大丈夫なんですか?」
言いながら、うつ伏せに倒れる大黒柱に視線を向ける。
後頭部から血を流して沈黙する様は、殺人事件の被害者みたいだ。
「ああ。大丈夫よ、このくらい」
至って明るい声で言う夢海さん。
「結婚してから、そうね…5873回はやってるから。大丈夫でしょ」
「どの辺が大丈夫なんですか!?」
「この人の頭も、昔と比べれば頑丈になったし、問題無いんじゃないかしら?」
「ありすぎですよ! 肉体的にも道徳的にも!」
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