11.嵐の前の騒がしさ

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オレがツッコんでいると、 「お母さん?」 ふすまの陰から、心配そうな声が聞こえてくる。 「今の音って、まさか…」 姿を現した葛西は、物言わぬ父親を目の当たりにして、セリフを中断した。 そして、頭を抱えて言う。 「お母さん…。お客さんの前で金だらいは…」 「ごめんね~、つい」 夢海さんは苦笑し、葛西に指示する。 「お父さん、部屋まで運んであげて。今日はちょっと強めに殴っちゃったから」 「…うん」 返事をした葛西は、懐から紙片を取り出し、何やら唱え始めた。 出てきたのは、オレの中ではお馴染みとなった<犬神>。 「運んであげて」 コクンと頷いた犬神は、細長い体で、晴十郎さんをぐるぐる巻きにして、宙へ持ち上げる。 見た目は頼りなさそうだけど、かなりの力持ちらしい。 「行こ」 葛西の言葉に再び頷いた犬神は、晴十郎さんを抱えて、部屋を出ていく。 「じゃ、なるべく早く戻るから」 オレに言い残して、葛西も部屋を出ていった。
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