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オレがツッコんでいると、
「お母さん?」
ふすまの陰から、心配そうな声が聞こえてくる。
「今の音って、まさか…」
姿を現した葛西は、物言わぬ父親を目の当たりにして、セリフを中断した。
そして、頭を抱えて言う。
「お母さん…。お客さんの前で金だらいは…」
「ごめんね~、つい」
夢海さんは苦笑し、葛西に指示する。
「お父さん、部屋まで運んであげて。今日はちょっと強めに殴っちゃったから」
「…うん」
返事をした葛西は、懐から紙片を取り出し、何やら唱え始めた。
出てきたのは、オレの中ではお馴染みとなった<犬神>。
「運んであげて」
コクンと頷いた犬神は、細長い体で、晴十郎さんをぐるぐる巻きにして、宙へ持ち上げる。
見た目は頼りなさそうだけど、かなりの力持ちらしい。
「行こ」
葛西の言葉に再び頷いた犬神は、晴十郎さんを抱えて、部屋を出ていく。
「じゃ、なるべく早く戻るから」
オレに言い残して、葛西も部屋を出ていった。
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