11.嵐の前の騒がしさ

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静寂が訪れるが、 ─カコンッ… 鹿威しが鳴るのを合図に、夢海さんが口火を切った。 「神崎君のこと、晴海からよく聞いてるわよ」 「え?」 思わず彼女の顔を見る。嬉しそうな笑顔が、まっすぐに見つめ返してくる。 「あの子、たまに帰ってきた時、色々な話をしてくれるんだけど…必ずあなたのことを話に出すのよ」 「そう、ですか…」 だからオレのことも知ってたのか…。 「そのあなたが、今日来てるって聞いた時は、その…てっきり"そーゆー挨拶"かと…」 「あの、それは…」 「分かってるわ。ウチの頑固な大黒柱に、何か話があったんでしょ?」 「…はい」 ああ、やっと話を戻せた。この達成感は何だろう? 「クラスマッチに出場できるように、一緒に説得してくれないかって、葛西さんに頼まれたんです」 「ごめんなさいね。あの子のために、わざわざウチまで来てもらって…」 「気にしてませんよ。大したことでもないんで」 真っ赤な嘘だと、心の中で笑ってしまう。 「クラスマッチに出場、か…」 ポツリと呟いた夢海さんは、どこか遠い目で物思いにふけり始める。 「………」 何と言って沈黙を破ろうか、考えられたのも数秒。 「神崎君」 彼女が呼びかけてきた。
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