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「何ですか?」
聞き返すと、夢海さんは真剣な口調で、昔話を始めた。
「あの子は…晴海は生まれた時から、体が弱くてねぇ。片時も目の離せない子だったわ」
「………」
「今はもう人並みの体力はあるけど…小さい頃は、ほとんど屋敷から出られなかったのよ」
「………」
オレは黙って話を聞く。何かスゲー大事なことを明かされてる気がするぞ…。
「そんなモンだから、我が旦那は、ちょっと過保護なのよ~」
「………」
「何かと晴海を気遣うのはいいんだけど…それが行き過ぎて、逆に晴海を束縛してるみたいなのね」
「…つまり」
なかなか出してくれない結論を、オレから出すことにした。
「晴十郎さんが葛西を止めるのは、ただ純粋に心配しているから…。
そう言いたいんですね?」
「………」
オレの顔をじっと見つめる夢海さんは、やがて笑みを浮かべる。
「その通り。察しが良いわね」
「どうも」
良くなきゃクラスマッチは乗りきれないな。オレの場合。
「晴海の言い分は分かるわ。でも私は、あの人の気持ちだって、分からなくもないの」
彼女の言葉からは、嘘も何もない、まっすぐな意志を感じた。
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