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「………」
対するオレは、相変わらず沈黙している。
「説得するかどうかは、あなたが決めることだから、私は何も言えないわ」
立ち上がった夢海さんは、
「でも…できることなら、あの人の思いも汲(く)んであげてね」
優しく言って、和室を後にした。
オレの答えを聞かなかったのは、オレが言葉に詰まることが分かっていたからだろう。
「………」
葛西が淹れてくれた緑茶を、一口すする。
おいしいが、冷めていた。
「…ふぅ~~~」
人ん家に来てため息って、失礼な気がするけど、仕方ないよね。
(葛西の意志か…晴十郎さんの意志か…)
どっちを尊重すべきか…。どっちも尊重すべきなんだろうがねぇ…。
(…でも…)
オレだって、晴十郎さんの気持ちは、分からなくもない。
一応オレにも、"そーゆーヤツ"はいるんだし…。
(………)
しばらく考えたオレは、とにかく、晴十郎さんの部屋に行こうと決意する。
「…っしゃ!」
そして、気合いを入れて立ち上がろうとして、
(…あ)
葛西の湯飲みの中に、茶柱を発見した。
「………」
飲むわけにもいかないし、放っておいたが、何かもったいない気がした。
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