11.嵐の前の騒がしさ

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「………」 まずは葛西が、目を丸くして黙り込む。 「………」 次にオレが、目を逸らして沈黙した。 「………」 「………」 この部屋には鹿威しが無ぇからな…。静けさが際立つぜ。 「…どうして?」 責めるような問いかけが、オレの心に突き刺さる。痛い…。 「…さっき、葛西の母さんから聞いたんだけどさ…」 夢海さんから聞かされた話を繰り返す(読み方忘れてないか? "ゆみ"だよ?)。 聞いてる間も、聞いた後も、葛西は黙っていた。 「晴十郎さん…葛西のことを心配してるから、クラスマッチには出させたくないんじゃないか?」 「………」 葛西の表情は複雑だ。一言で言い表すことができない。 ややあって、呟くように言う。 「そうかもしれないけど、でも…いきなり休んだら、メンバー足りなくなって、みんなに迷惑だよ…」 「大丈夫だよ!」 苦笑も混ぜて言ってやる。 「学園側だって、何かしら考えてくれるだろ。他のメンバーには、オレがちゃんと納得させるし」 「………」 それでも、葛西は首を縦に振ろうとしない。 体の4割くらいは、優しさでできてるような子だし、分かる気もすんだけどね。
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