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しかし、だ。
これも葛西と晴十郎さんのため。心を鬼にして、葛西を説得するとしよう。
「葛西の気持ちも分かるけどさ…今回は、親父さんの言うこと聞いてやりなよ」
「…神崎君」
「ん?」
「学園祭に行くのも…ダメかな?」
「ほへ?」
話が掴めないオレに、葛西は真剣で悲しそうな眼差しと共に言う。
「そのお茶会…学園祭の日付と、ぴったり重なるの」
「…つまり、このままだと葛西の学園祭は、準備だけで終わっちまうってわけか?」
葛西は頷いて肯定した。
「あー、っと…」
準備に参加しただけの学園祭。思い出もクソもねーな…。
「…分かった。そこん所は、どうにか説得してみる。クラスマッチに出ないのを条件にすれば…」
「神崎君」
「は………い゙?」
唐突に聞こえた低い声に、オレは発言の途中で固まる。
恐る恐る布団へ目を向けてみると、
「…晴十郎…さん?」
存在感に満ちた大男が、上半身を起こしていた。
「少し…席を外してくれないか?」
「…どの辺から起きてたんですか?」
「外してくれないか?」
「はい」
有無を言わせぬ声に、オレは素直に答える。
…嫌な汗が、大量に溢れていた。
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