11.嵐の前の騒がしさ

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鋼介退室後─── 「…いつ起きたの?」 「彼が入ってきた時だ」 葛西の問いに、晴十郎はずっしりした声で答える。 「じゃあ、話も最初から?」 「ああ」 「そう…」 自分たちの会話が筒抜けだったことに、葛西は縮こまってしまった。 対する晴十郎も、言い出しづらそうに黙り込む。 掛け時計の秒針が、半回転した頃、 「晴海」 晴十郎が口火を切った。 「…何?」 「何故お前は…他の誰でもなく、彼を説得のために呼んだのだ?」 「それは………」 葛西は、自分が答えに詰まったことに驚き、数秒間考える。 考えて、言葉を整理して、言った。 「神崎君だったら…みんなが納得できるように、話を上手くまとめられる、って思ったから…」 晴十郎は娘の言葉に、目を閉じて聞き入る。 次に彼が口を開いた時、たっぷり十秒が経過していた。 「…信頼しているのだな」 「うん」 葛西がはっきり頷いたことに、晴十郎は密かに驚く。 同時に、彼女が鋼介をどう思っているのか、直感的に理解した。 「晴海」 「?」 「彼は…率直に言って、大した男だな」
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