11.嵐の前の騒がしさ

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「え?」 予想外の一言に、葛西は思わず聞き返してしまった。 一方、セリフを言った張本人は、決まりが悪そうに目を伏せている。 が、一度言った以上、言い切るしかないと思ったようで、言葉を続けた。 「…他人の内面を、よく考えて行動している。最近の十代にしては、とても賢いな」 「…私もそう思う」 笑顔で頷く愛娘に、晴十郎も小さく笑みを返した。 彼の、鋼介に対する評価を聞いて、少し安心したのだろう。葛西は嬉しそうに続ける。 「いつも周りのことを考えてるのに、自分のことも、ちゃんとこなす。そーゆー人なの、神崎君は」 「…そうなのだろうな」 彼はこう返しながら、心の中で苦笑していた。 (こんなに嬉しそうな晴海を見るのは、久しぶりだな…) 同時に、少し寂しくもあった。 (もう…親が笑顔を与えてやる歳でもない、ということか…) そんな思いからか、晴十郎は自然と尋ねていた。 「晴海。単刀直入に聞かせてくれないか?」 「何?」 一瞬だけ迷い、問う。 「お前は…彼のことをどう思っているんだ?」 「………」 うつむいて沈黙する葛西は、顔を真っ赤に染めた。答えを言ってるようなものである。
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