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「え?」
予想外の一言に、葛西は思わず聞き返してしまった。
一方、セリフを言った張本人は、決まりが悪そうに目を伏せている。
が、一度言った以上、言い切るしかないと思ったようで、言葉を続けた。
「…他人の内面を、よく考えて行動している。最近の十代にしては、とても賢いな」
「…私もそう思う」
笑顔で頷く愛娘に、晴十郎も小さく笑みを返した。
彼の、鋼介に対する評価を聞いて、少し安心したのだろう。葛西は嬉しそうに続ける。
「いつも周りのことを考えてるのに、自分のことも、ちゃんとこなす。そーゆー人なの、神崎君は」
「…そうなのだろうな」
彼はこう返しながら、心の中で苦笑していた。
(こんなに嬉しそうな晴海を見るのは、久しぶりだな…)
同時に、少し寂しくもあった。
(もう…親が笑顔を与えてやる歳でもない、ということか…)
そんな思いからか、晴十郎は自然と尋ねていた。
「晴海。単刀直入に聞かせてくれないか?」
「何?」
一瞬だけ迷い、問う。
「お前は…彼のことをどう思っているんだ?」
「………」
うつむいて沈黙する葛西は、顔を真っ赤に染めた。答えを言ってるようなものである。
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