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押し黙る二人に代わるように、掛け時計が鳴り出す。
時刻は、既に7時。
「…今日はもう遅い。神崎君も、そろそろ帰った方がいいだろう」
「あ…うん、そうだね」
退室する理由ができた葛西は、そそくさと立ち上がる。
「晴海」
が、すぐに呼び止められた。
「何?」
「済まないとは思うが…」
晴十郎は顔をしかめて、重い声を出す。
「学園祭…出るなら、初日だけにしてくれないか?
こんなことは言いたくないが…あまり休むと、葛西家の立場も危ういのだ。だから…」
「いいよ」
あまりに呆気なく了承され、晴十郎は拍子抜けしてしまった。
「…本当に、いいのか?」
「…この前のクラスマッチの時も、貴族の集まりがあったんだよね?」
「! 何故知っている!?」
晴十郎は、葛西が気兼ね無くクラスマッチに出場できるよう、集まりのことは黙っていたのだ。
「お母さんが教えてくれた」
葛西の言葉に、彼は「余計なことを…」と小さく呟いた。
「…これ以上休んだら、お父さんにも、家そのものにも悪いもん」
葛西は穏やかで優しい笑顔を浮かべている。
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