11.嵐の前の騒がしさ

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鋼介サイド─── 晴十郎さんの意向は、門の外に出た時、葛西から聞いた。 「じゃあ、初日は遊べるってわけか」 「うん。お父さんにしては、譲歩した方だよ?」 厳しい家庭環境だ…。葛西自身は、もう慣れているのだろうが。 「それに、嬉しかったし」 「嬉しかったって…何が?」 キョトンと聞くオレに、葛西は眩しいほどの笑顔で言う。 「私ね…正直なところ、お父さんはちょっと苦手なんだ。 いつも仏頂面で怖くて、何を考えてるか、分からないところがあるから」 「まあ、分からなくもねーけど…」 あの人の気迫は、幾多の死線をくぐり抜けてきた、剣豪を思わせたぜ。 「でも、ちゃんと私の心配をしてくれてる、ってことが分かったから」 葛西の微笑みは、周りの人に幸せを分けているかのようだ。 「だから今は…とても嬉しい」 「…そっか」 返すオレは、しかし後ろめたさを感じていた。 結局オレは、晴十郎さんじゃなくて、葛西を説得したんだよな…。 約束を破ってしまった時のような、重たい自責の念がのしかかってくる。
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