11.嵐の前の騒がしさ

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謝るべきことなのかは知らない。だが、心のどこか、脳のどこかが、謝るようにオレを促す。 「あのさ、葛西」 「何?」 小首を傾げる葛西を前に、少し固まった後、 「…ごめんな。晴十郎さんを説得するはずだったのが、葛西を説得する感じになっちまって…」 「お父さん、言ってたよ」 「?」 オレに最後まで言わせず、葛西は晴十郎さんの口調を真似て言った。 「『彼は、他人の内面をよく考えて行動している、賢い人だ』って」 「………」 嬉しさが半分、驚きが半分、といったところか。 「神崎君は、お父さんの内面を考えて、私を説得するっていう答えを出したんでしょ? なら、それは間違ってないよ」 「…そうは言ってもさ…」 案外オレって、自分の間違いを気にし続けるタイプなのかな? 言ったきり、何も言わないオレに合わせて、葛西も沈黙する。 が、数秒後、 「じゃあ、神崎君」 葛西の方が口を開いた。 「また一つだけ、頼みを聞いてもらってもいい?」 「…ああ」 わざわざ免罪符を用意してくれるらしい。やはり葛西は優しい子だ。 のんきに考えていると、その優しい子は言った。
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