101451人が本棚に入れています
本棚に追加
/562ページ
謝るべきことなのかは知らない。だが、心のどこか、脳のどこかが、謝るようにオレを促す。
「あのさ、葛西」
「何?」
小首を傾げる葛西を前に、少し固まった後、
「…ごめんな。晴十郎さんを説得するはずだったのが、葛西を説得する感じになっちまって…」
「お父さん、言ってたよ」
「?」
オレに最後まで言わせず、葛西は晴十郎さんの口調を真似て言った。
「『彼は、他人の内面をよく考えて行動している、賢い人だ』って」
「………」
嬉しさが半分、驚きが半分、といったところか。
「神崎君は、お父さんの内面を考えて、私を説得するっていう答えを出したんでしょ?
なら、それは間違ってないよ」
「…そうは言ってもさ…」
案外オレって、自分の間違いを気にし続けるタイプなのかな?
言ったきり、何も言わないオレに合わせて、葛西も沈黙する。
が、数秒後、
「じゃあ、神崎君」
葛西の方が口を開いた。
「また一つだけ、頼みを聞いてもらってもいい?」
「…ああ」
わざわざ免罪符を用意してくれるらしい。やはり葛西は優しい子だ。
のんきに考えていると、その優しい子は言った。
最初のコメントを投稿しよう!