11.嵐の前の騒がしさ

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「学園祭初日、私に付き合ってくれませんか?」 「………」 丁寧にお願いされ、オレの脳ミソはしばらくフリーズした。 …そんな光栄な権利を、免罪符にしていいのだろうか? 「オレは構わねーけど…いいのか?」 「? 何が?」 「桜田とか、藤咲とか…他のヤツらと回んなくていいのか?」 すると葛西は、クスクスと小さく笑いながら、頷いた。 「うん。だって、その…」 で、少々もじもじした後に、顔を朱に染めながら言う。 「神崎君と回った方が…楽しいと思うし…」 「………」 今、無性に叫びたい。ナイアガラの滝とか、雄大な自然を前にして、 『神様どうもありがとう~!』 みたいなことを叫びたい。 「…じゃあ、初日だな?」 熱く高ぶる、ほとんど爆発寸前のハートを抑え、とりあえず聞く。 「うん。迷惑じゃないなら」 「悪ぃ。んなこと言えるほど、勇気無ぇわ」 オレの言葉に、葛西は再びクスクス笑う。その顔は、まだ微妙に赤い。 「じゃあ、そろそろ帰る」 「あ、うん。本当に一人で大丈夫?」 「男に言うセリフじゃねーだろ」 「そだね」 短い会話の後、駅へ歩き出す。 オレの背中は、しばらくの間、葛西のものであろう視線を感じていた。 …葛西じゃなかったら誰だよ、とも思うんだけどね。
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