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「学園祭初日、私に付き合ってくれませんか?」
「………」
丁寧にお願いされ、オレの脳ミソはしばらくフリーズした。
…そんな光栄な権利を、免罪符にしていいのだろうか?
「オレは構わねーけど…いいのか?」
「? 何が?」
「桜田とか、藤咲とか…他のヤツらと回んなくていいのか?」
すると葛西は、クスクスと小さく笑いながら、頷いた。
「うん。だって、その…」
で、少々もじもじした後に、顔を朱に染めながら言う。
「神崎君と回った方が…楽しいと思うし…」
「………」
今、無性に叫びたい。ナイアガラの滝とか、雄大な自然を前にして、
『神様どうもありがとう~!』
みたいなことを叫びたい。
「…じゃあ、初日だな?」
熱く高ぶる、ほとんど爆発寸前のハートを抑え、とりあえず聞く。
「うん。迷惑じゃないなら」
「悪ぃ。んなこと言えるほど、勇気無ぇわ」
オレの言葉に、葛西は再びクスクス笑う。その顔は、まだ微妙に赤い。
「じゃあ、そろそろ帰る」
「あ、うん。本当に一人で大丈夫?」
「男に言うセリフじゃねーだろ」
「そだね」
短い会話の後、駅へ歩き出す。
オレの背中は、しばらくの間、葛西のものであろう視線を感じていた。
…葛西じゃなかったら誰だよ、とも思うんだけどね。
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