11.嵐の前の騒がしさ

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桜峰駅に着いた時、時刻は既に7時半を回っていた。 移動手段が電車とはいえ、市外へ出かけると、やっぱり遅くなってしまう。 (…何か食って帰るか) 今は夕飯を作る気分じゃない。何かこう…上手く言えないけど、満たされた感じだ。 まあ、男子諸君には伝わったと判断して、話を先に進めよう。 (ハンバーガー…いや、定食屋もいいな…。どっちにするかな?) 歩きながら考えていると、ある店の前で足が止まった。 言わずと知れた牛丼チェーン店、「吉○家」である。 (木宮のヤツ、今日もいるんだろうな…) カウンターに座り、読書しながら牛丼を貪る、クールな常連の姿が目に浮かぶ。 (…ここにしよう) 自然とそーゆー結論に達した。 クラスマッチを前に、親好を深めてみてもいいだろう。正直、深まるとは思えんが…。 自動ドアをくぐり、カウンター席を見る。 しかし、そこに木宮の姿は無かった。もう帰ったのだろうか? 「らっしゃい!」 席に座ると、店主の威勢の良い声が飛んできた。 「お! 確か、木宮のダンナの、お友達でしたね!」 言われて、ちょっと驚く。 オレが木宮とこの店に来たのは、もう何ヵ月も前のことなのに…。
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