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「む? その顔…あっしが坊っちゃんを覚えてんのが、不思議でしょーがねぇっつー顔ですね?」
「よく分かりますね」
「かつては、頭もキレりゃケンカも強ぇ、"桜の狼"と呼ばれたモンでさぁ」
「いや、それは嘘でしょ」
「かっかっか! まあ、ゆっくりしてってくだせぇ! 大盛りでいいッスか?」
「あ、はい」
オレのツッコミをひらりとかわし、店主の親父さんは、店の奥へ引っ込んだ。
「………」
木宮がここの常連なのは、牛丼もそうだが、あの親父さんが好きだからじゃねーのかな?
二回会っただけのオレですら、好きになりそうなんだ。常連の木宮は、もっと慕っているだろう。
「へい、お待ち!」
おっと、来るのも早い。
受け取ったどんぶりから、食欲をそそる香りが漂ってくる。
「いただきます」
「あいよ! たっぷり食って…て、売る側のあっしが言うのは、アレッスよね」
思い出したように苦笑い。本当にいい人だ。
「あ、そうだ。ちょっと聞きたいんですがね…」
「はい?」
牛丼を食べる手を止め、親父さんの話に集中する。
「木宮のダンナ、今日何かあったんですかぃ? まだ来てねーンスけど…」
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