11.嵐の前の騒がしさ

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「む? その顔…あっしが坊っちゃんを覚えてんのが、不思議でしょーがねぇっつー顔ですね?」 「よく分かりますね」 「かつては、頭もキレりゃケンカも強ぇ、"桜の狼"と呼ばれたモンでさぁ」 「いや、それは嘘でしょ」 「かっかっか! まあ、ゆっくりしてってくだせぇ! 大盛りでいいッスか?」 「あ、はい」 オレのツッコミをひらりとかわし、店主の親父さんは、店の奥へ引っ込んだ。 「………」 木宮がここの常連なのは、牛丼もそうだが、あの親父さんが好きだからじゃねーのかな? 二回会っただけのオレですら、好きになりそうなんだ。常連の木宮は、もっと慕っているだろう。 「へい、お待ち!」 おっと、来るのも早い。 受け取ったどんぶりから、食欲をそそる香りが漂ってくる。 「いただきます」 「あいよ! たっぷり食って…て、売る側のあっしが言うのは、アレッスよね」 思い出したように苦笑い。本当にいい人だ。 「あ、そうだ。ちょっと聞きたいんですがね…」 「はい?」 牛丼を食べる手を止め、親父さんの話に集中する。 「木宮のダンナ、今日何かあったんですかぃ? まだ来てねーンスけど…」
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