11.嵐の前の騒がしさ

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予想外の言葉に、オレは自分の耳を疑った。 「本当ですか?」 「ええ。いつもの今頃は、もう食い終わってるはずなンスけど…」 食い終わるどころか、店にも来ていない。あの木宮にしては、確かに妙だ。 「特に何も聞いてませんよ。もっとも、オレは今日、用があったんで、早く帰ったんですけど」 「そうですかぃ」 どことなく重い声で返す親父さん。 「別に、是が非でも来てほしいってんじゃ無いンスが…あの人がいねーと、な~んか寂しいモンでねぇ…」 親父さんの気持ちは分かる。あいつは無表情で無感動なヤツだけど、存在感は大きいからな。 「ま、明日辺り『あっしが泣いてたぜ』とでも言っといてくだせぇ」 「客相手に嘘ついていいんですか?」 「グサッ!」 派手な仕草で、心臓を押さえる親父さん。 「まあ、一応伝えときますよ」 「あい。ありがとうございやす」 ごゆっくり、と言い残し、親父さんは別の客の応対に回った。 オレも食事を再開するが、木宮が気がかりだ。 あいつの場合、大抵のことはどうにかなりそーだけど…。 (マジで何かあったんじゃねーだろうな…?) 一抹の不安は拭えない。
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