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予想外の言葉に、オレは自分の耳を疑った。
「本当ですか?」
「ええ。いつもの今頃は、もう食い終わってるはずなンスけど…」
食い終わるどころか、店にも来ていない。あの木宮にしては、確かに妙だ。
「特に何も聞いてませんよ。もっとも、オレは今日、用があったんで、早く帰ったんですけど」
「そうですかぃ」
どことなく重い声で返す親父さん。
「別に、是が非でも来てほしいってんじゃ無いンスが…あの人がいねーと、な~んか寂しいモンでねぇ…」
親父さんの気持ちは分かる。あいつは無表情で無感動なヤツだけど、存在感は大きいからな。
「ま、明日辺り『あっしが泣いてたぜ』とでも言っといてくだせぇ」
「客相手に嘘ついていいんですか?」
「グサッ!」
派手な仕草で、心臓を押さえる親父さん。
「まあ、一応伝えときますよ」
「あい。ありがとうございやす」
ごゆっくり、と言い残し、親父さんは別の客の応対に回った。
オレも食事を再開するが、木宮が気がかりだ。
あいつの場合、大抵のことはどうにかなりそーだけど…。
(マジで何かあったんじゃねーだろうな…?)
一抹の不安は拭えない。
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