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「…わぁーってますよ」
右京は頭を掻きながら言った。豪快にフケが飛び散る。
「本当に分かっているのかい? 君が言うと心配になってくるな…」
「…オレって信用ないんスね」
右京はため息混じりに言うが、瞳を鋭く煌めかせている。
「オレも…昔は大層な二つ名で呼ばれてたんスよ? 何か起こっても、大抵は大丈夫ですって」
「…昔話、嫌いだったんじゃないのか?」
電話の向こうから、理事長の呆れた声がした。
「…まあいい。今後何かあるようなら、すぐに報告してくれ。
必要とあらば、私設の自警団でも送るよ」
「どうも。それじゃ」
「またな、"葬送獣"クン」
─プツッ
ツー、ツー、ツー…
「………」
携帯電話をしまった右京は、再び窓の外を見た。
その目は、自然と鋼介に泳いでいく。
(………)
その射抜くような眼差しは、獲物を観察する狩人を思わせた。
(…重いだろ)
心中で、呟いた。
(あんなガキには…重すぎるだろ)
瞳には、憂い…。
右京は、『運命』の重さを痛感させられた。
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