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夕方───
輝く太陽が、水平線の向こうへ沈んでいく。真紅の光が窓から差し込み、部屋を包む。
「………」
オレ…旅に来たんだな…。しみじみだよ、うん。
大自然の雄大さに、心を奪われていると、
「…クソッ……クソッ……」
部屋の隅から、不気味な呪詛が漂ってきた。
慎士である。
「オレの…いや、男たちの夢が……」
立ち直れ。その真っ黒なオーラが部屋を包んでしまう前に。
「夢も希望も剥ぎ取られた男の気持ち…。お前に分かるのか!?」
夢や希望を奪う追い剥ぎなんて聞いたことねーよ。
が、慎士は妖しげに含み笑い。
「だがな、鋼介…。オレの夢は、まだ消えたわけじゃねーぜ…」
なんとなく分かるが聞いておく。
「どういう意味だ?」
「ここに来て、すぐに調べたんだがな…」
慎士は何故か小さい声になる。
「ここには、時間交代制の巨大露天風呂があるんだそーだ」
…で?
「まだ分かんねーのか?」
いや、分かってるけど聞きたくない…。
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