1.短いようで長い

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と言っても、それは単純な呼びかけだ。 『…鋼介!』 「………」 宍戸に勝った日の夜。ユーリ邸から帰る時、ユーリ本人にそう呼ばれた。 その後も何回か呼び捨てにされたが、それは、オレとあいつが二人きりの時だけ。 「………」 …だから? 今オレは、どんな表情で、どんな気持ちだ? 分からない…。 「…やれやれ……」 言葉にする。 それとタイミングを合わせたように、室内にアナウンスが響いた。 『生徒、ならびに教職員の皆様。 夕食の用意が整いました。1階の食堂へ、お集まりください』 現在時刻はもう7時。なかなか日が沈まないから、時間の感覚が狂うな…。 慎士を待ってても無駄なので、さっさと部屋を後にした。 (…長い一週間になりそうだ……) ため息も、当分の間は止まらないな…。
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